「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
穂高連峰を挟んで上高地と対峙する、北アルプスの山岳温泉地帯
奥飛騨温泉郷【目次】
このエリアは、「奥飛騨温泉郷・上高地・乗鞍高原」の3点セットで旅するのがべスト
奥飛騨温泉郷の概要
岐阜県高山市から国道158号で約35キロ・50分。
カーブが連続する上り坂から、北アルプスの峻険な岩肌が顔を覗かせば、長野県との県境・安房峠はもうすぐそこだ。
平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉の5つの温泉地からなる奥飛騨温泉郷は、その安房峠の手前に位置している。
別府、由布院に次ぐ豊富な湯量と、日本随一ともいわれる露天風呂の数、そして素朴さの中に温もりが感じられる温泉街。
そこには、遠路はるばる「湯めぐり」に訪れるだけの価値は十分にある。
四季を通してリピーターが多いことにも頷けよう。
温泉情緒を楽しみたいなら、冬がお勧め。
例年1月中旬になると、奥飛騨温泉郷は白銀に包まれ別世界に変わる。
幻想的なライトアップイベントが始まるのはこの頃で、各温泉地が雪見の長風呂を楽しみに訪れる温泉客をもてなそうと始めたらしい。
いつしかそれは「奥飛騨冬物語」と呼ばれ、岐阜県を代表する冬の催しとして定着しつつある。2月には「中尾かまくらまつり」と「平湯大滝結氷まつり」が幕を開け、奥飛騨の冬はピークを迎える。
奥飛騨温泉郷で、最初に手に入れたいもの
奥飛騨温泉郷にステイするなら、やはり「オトクなサービス」は見逃せない。
まずは平湯バスターミナルにクルマを置いて、すぐ近くにある「平湯温泉宿泊案内所(観光案内所)」に足を運び、以下の2つを購入しよう。
なお、1泊なら無理して買う必要はない。
奥飛騨温泉郷の「湯めぐり手形」
奥飛騨湯けむり達人
奥飛騨温泉郷では、「ひらゆの森」を筆頭に公営の日帰り温泉が充実しており、長きにわたって「湯めぐり手形」は発行されてこなかったが、2014年から16軒の宿泊施設を対象に、1200円で3枚の入湯シールがついた「奥飛騨湯けむり達人」が導入されている。
利用できる施設には、入湯シールが1回で2枚必要なところもあるため、3軒に使えるとは限らないが、共同温泉は含まれておらず、全てが民間の温泉旅館だ。
中には奥飛騨温泉郷で唯一露天風呂から槍ヶ岳が見える、「日本秘湯を守る会」加盟の老舗「槍見舘」もある。
チケットは木札になっており、他に分かりやすい場所では「道の駅奥飛騨温泉郷上宝」で購入できる。
奥飛騨の達人
また「奥飛騨湯けむり達人」とは別に、1冊100円という手軽な価格の割引クーポンマガジンが発行されている。
ポケットサイズの「奥飛騨の達人」は「奥飛騨をお得に旅するマガジン」の名の通り、各温泉地の紹介紙面やマップが掲載されたガイドブックとして色彩が強く、旅の記念品としてもお勧めだ。
綴じ込まれているクーポン券は、温泉よりも飲食店やレジャー施設で使えるものが多く、宿泊客を意識した内容になっている。
奥飛騨温泉郷の「温泉めぐりの秘訣」
普通の旅行者であれば、ここでは滞在中に入湯できる温泉の数より、行ってみたいと思う温泉の数のほうが多いと思う。
そうなると必要なのは、事前の「優先順位づけ」だ。
ぶらっと出かけて適当にという人は、分かりやすい場所にあって、広い駐車場が完備する、平湯温泉の日帰り利用がメインの施設「ひらゆの森」に直行し、そこで満足しておしまい…
聞かなくても、その結果は見えている(笑)。
もちろん、それはそれで悪くはない。
なぜなら「ひらゆの森」は、規模・設備・サービスのバランスが絶妙な、日本でも指折りの公共温泉だからだ。
ただ「奥飛騨温泉郷に行って来ました。」と云うには、少々旅の中身が薄すぎるようにも思える。
できれば、各温泉地の共同浴場をまわったり、名の通った温泉旅館で日帰り入浴を楽しむといった、「奥飛騨温泉郷ならでは」と呼べる湯めぐりを楽しんでみていただきたい。
滞在にお勧めなのは、自炊ができるキャンプ場
ここから先は車中泊で奥飛騨温泉郷を訪れる人向けの話になるのだが、あえて筆者がこう書く理由はふたつある。
ひとつはグルメ。
ある程度日本を旅している人なら、このロケーションで「美味しい」と呼ばれる料理の察しがつくと思う。そう大方は、岩魚、蕎麦、山菜あたりだ。
だが、それでは大したお金が取れないので、温泉宿ではそこにメインデッシュの「飛騨牛」をあわせている。
ここで大事なのは、あなたが行きたいのは「飛騨牛の美味しい奥飛騨温泉郷にある店」か、「奥飛騨温泉郷らしく飛騨牛を美味しく食べさせてくれる店か」だ。
前者なら、奥飛騨温泉郷よりも高山に出たほうがいい。
もっと云うなら、東京や大阪のほうがいい。流通のセオリーからすれば、いい肉ほど経済力のあるところに出荷される。
また後者なら、たぶんステーキやすき焼きは出ない。
奥飛騨温泉郷でのメニューは、飛騨地方のソウルフードである「朴葉味噌焼き」になるはずだ。
しかし「朴葉味噌焼き」なら、自分でも十分おいしく作れる(笑)。
なぜなら奥飛騨温泉郷には、それに必要な食材がちゃんと手に入る場所があるからだ。
なお、山菜蕎麦はランチで外食できるし、岩魚の塩焼きは道の駅上宝に行けば、駐車場にある売店がテイクアウトで売っている(笑)。
奥飛騨温泉のランチにお勧めのお店
もうひとつは車中泊事情
、結論から云うと「奥飛騨温泉郷では車中泊旅行者は歓迎されていない」。
特にキャンピングカーに対しては露骨で、ご覧の通り栃尾温泉の共同浴場である「荒神の湯」の駐車場には、入ることさえ拒まれている始末だ(笑)。
よほど過去に遺恨があるのだろうが、とにもかくにも現在はキャンピングカーが「日本一嫌われている場所」と云っても過言ではあるまい。
しかしキャンピングカーを買えば、誰だって一度はメジャーな奥飛騨温泉郷に足を運びたくなるのは当然だ。
しかも、そういう人たちは、今書いたような実情を知らないため、なかば強引な車中泊をしようとする…
この堂々めぐりが解決するには、まだまだ時間がかかるだろう。
要は遺恨を持つ人の「勢力が衰える」のを待つしかないわけだが… そんな奥飛騨温泉郷でも、キャンプ場に泊まる旅人には優しくしてくれる(大笑)。
このエリアは、「奥飛騨温泉郷・上高地・乗鞍高原」の3点セットで旅するのがべスト
とはいえ、キャンプ場に何日も滞在していたのではお金もかかるし、正直そこまで温泉三昧を求めている人は少ないと思う。
ゆえにマイカーで動くのなら、安房トンネルを超えて長野県に向かおう。
上高地や乗鞍高原は、特にアウトドアの知識や装備がなくても十分北アルプスの大自然と触れ合える。
なお下のコーナーには、本気でアウトドアをしている人にも役立つ内容が記されているので、ぜひ続けてご覧いただきたい。
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