この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」をリライトしたものです。
本当の”グランピング”を演出する。
昨年はレブンアツモリソウと知床のシャチを撮るため、6月に北海道に渡ったが、今年は当初この季節に北の大地に出向くつもりはなかった。
だが、新聞広告を見て「気が変わった」。
新日本海フェリーには「ヴィーナス・トラベル」という関連旅行会社があり、例年ハイシーズン以外はオトクなマイカーパックツアーを実施している。
2011年の秋に一度利用したことがあるが、「最長10日間」というのは通常の北海道取材で利用するには短すぎるため、長らくご無沙汰していた。
それがなぜ、今年は利用できたのか…
それには2つの理由がある。ひとつは5月末に娘夫婦の子供が生まれることがわかっていたため、家内が長期休暇を6月に取得していたこと、そしてもうひとつは取材内容である。
ご承知の方も多いと思うが、筆者は車中泊専門誌「カーネル」の夏号に毎年「北海道特集」を連載し、その他に「北海道車中泊コースガイド」という本を執筆している。
中を見ていただければわかるが、この本にはこれまで北海道で撮影してきた1000枚以上のオリジナルフォトを載せている。
2008年のカーネル発刊以来、毎年北海道に渡って写真を取り続けているので、風景写真やドライブシーンはそれなりに揃えられるのだが、キャンプシーンだけは例外だ。
キャンパーならわかると思うが、テントを張らなくても、リビングをきちんと設営して料理を作れば、それだけで4時間近い時間がかかる。
広大な北海道をクルマで転々と旅する場合、自由に使える時間は移動を含めて10時間ほどしかない。その貴重な時間の40%以上をキャンプシーンに割くというのは、取材のコスパを考えると「割の合わない作業」になる。
そのうえ肉体的にもハードで、ストレスもたまる。そもそも筆者が車中泊を始めたのは、毎日の「設営・撤収作業」を割愛するためだった(笑)。
しかしかたやでは、キャンプが北海道旅の大きな魅力であることは確かな話だ。人工物が見えない自然の中のサイトを独占したり、広大な芝生のサイトで寛いだり… 2000年に筆者が初めて北海道に渡った理由は、本州では味わえないキャンプ=まさにグランピングが目的だった。
ただし北海道だからといっても、そういう素晴らしいロケーションのキャンプ場がどこにでもあるわけではない。
熊が出ないところでオートキャンプができ、水道と水洗トイレがあるとなると、「指折り数えてナンボ」というのが実態だ。
ゆえに筆者のライブラリーの「北海道キャンプシーン」は、ほぼ全て出尽くし、枯渇状況になっていた。
これらの矛盾と難問を解決する良い方法はないものかと思案していた時に、「10日間・2名一等往復75,000円」の新聞見出しが目にとまった。
そうか、これで「キャンプシーンのみのロケ」をすればいい!
例年北海道では30~40万円近い経費がかかるわけで、それを2分割し、後半は車中泊のクルマ旅に専念すれば可能な話である。
かくして、北海道キャンプ三昧なる、奇抜なロケの旅が始まった。
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