車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、2023年7月現在の「大山・蒜山パークウェイ」のドライブ及び車中泊スポットに関する情報です。
この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

「大山と蒜山(ひるぜん)高原」は見どころを選べば、お金を使わなくても十分に楽しめるネイチャーフィールド
大山・蒜山高原の筆者の歴訪記録
※記録が残る2001年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2001.04.05
2002.11.02
2003.08.10
2003.10.25
2007.11.11
2008.08.09
2009.03.28
2010.11.05
2011.08.12
2013.03.23
2020.03.22
2023.05.04
2023.07.17
※大山・蒜山高原での現地調査は、2023年7月が最新になります。
大山・蒜山パークウェイ ドライブ&車中泊スポットガイド
車中泊の旅人にとっての、大山&蒜山高原のベスト・ドライブコース
車中泊の旅人にとっての、大山&蒜山高原のベスト・ドライブコース
まず最初に…
この記事は中国地方以外に在住する車中泊の旅人が、「山陽・山陰地方」を旅することを前提に記している。
というのは、鳥取・岡山県人が大山や蒜山高原をドライブする、あるいはそこのホテルやキャンプ場に数日間滞在する人が、その間に日帰りでドライブするのと、連続的・広範囲に「山陽・山陰地方」を車中泊で旅する人では、求めるルートが根本的に異なるからだ。
分かりやすく云うと、前者は「周回」で後者は「縦断」。
高速道路を利用すれば、倉敷から米子まで一気に走り抜けるのは簡単だが、時間に余裕を持てる旅人が、中国地方の最高峰である大山と、”西の軽井沢”と噂される蒜山高原(誇大広告かも<苦笑>)に立ち寄ってみたいと思うのは当然だ。
その前提に立ち、1日で観光に充てられる時間、さらに食べられる量、そして歩ける体力といった、現実的な数値を当てはめることによって初めて、ベスト・ドライブルートというものが浮かび上がる。
それが上のマップの青いラインで、「大山・蒜山パークウェイ」と呼ばれている。
しかし岡山・鳥取両県にまたがる「大山・蒜山高原 ドライブガイド」というものは皆無に等しく、唯一右の「鳥取・岡山DRIVE MAP」だけが見つかった。
その理由は2つある。
ひとつはよく云われているように、観光行政が「縦割り」であること。
たとえば、このマップは”鳥取県民の税金”で作られたものだが、岡山県にある観光スポットは、「岡山のことはそっちに聞いてよね!」と云わんばかりの扱いだ(笑)。
もうひとつは、車中泊クルマ旅が過小評価されていること。
早い話、旅行業界とマスコミが、車中泊クルマ旅を「お金にならないもの」と判断しているから、需要に応じたガイドを誰も作ろうとしない。
確かに筆者が青いラインを引いたルートは、旅行関係者とその手下のようなブロガーたちが、声色を合わせて勧める観光施設からは外れている(笑)。
しかしそれは、求めているものが違うことに起因する。
大山のような一級品のネイチャーフィールドでは、あえてレジャーや観光目的に作られた施設に行かずとも、満足が得られる場所は見つけられる。
だったらそれを知ってる、”大人の事情”とは無縁の旅人が作ればいい(笑)。
大山&蒜山高原の見どころ
というわけで、ここでは主に「大山・蒜山高原」の自然と歴史・風土が感じられる、無料またはリーズナブルな見どころを紹介していくことにしよう。
大山参道(大山寺本宮~大神山神社奥宮)
まずは、クルマが駐められるかどうかの心配をする必要がないほど、大規模な駐車場が用意された大山山頂部の周辺で、その歴史と風土に出会えるところから。
「大山寺本堂」は、「県立大山駐車場」からこの御幸参道大通りをまっすぐ歩いて約15分、また「大神山神社奥宮」は約30分のところにあり、いずれも参拝は無料だ。
大山は「神坐(いま)す山」として古来より崇められ、山岳信仰の聖域として、明治22年まで一般人の入山が禁止されていた。
信仰の中心となった「大山寺」は、最盛期には3000人もの僧兵を擁した大寺院で、平安末期から室町時代には、天台宗山岳仏教の修験場として寺勢を誇っていた。
今も本堂を中心に、寺宝を収蔵した宝物館霊宝閣、阿弥陀堂などが現存する。
「大山寺」の山門付近にあるこの分岐点は、かつての「大山寺本堂」で、明治初頭の神仏分離令により大山寺から独立した、大智明大権現の社殿「大神山神社奥宮」への入口になる。
鳥居の先には自然石を敷き詰めた日本一長いとされる参道が、約700メートルにわたって続いている。
移設時に扉の開き方が通常とは反対になってしまった「後ろ向き門」と呼ばれる神門をくぐると、ようやく日本最大級の権現(ごんげん)造りで、国の重要文化財に指定されている「大神山神社奥宮」が見えてくる。
だがこの日は、ようやく辿り着いた「大神山神社奥宮」が修復作業の真っ最中で、ほとんど見られずじまい(苦笑)。
度重なる地震と気候変動が増した今日では、古刹の修復工事は珍しものではなくなり、事前に公式サイトで調べていかなかったほうが悪いのだが…
「大神山神社奥宮」の社殿は焼失を繰り返しており、現在の建物は江戸時代後期の1805年に再建されたもので、大規模な修復工事は1995年10月以来となる。
今回は積雪や台風の被害で、いたるところに穴が空いた「こけらぶき」の屋根を全てふき替え、柱に施された「白檀(びゃくだん)塗り」も修復するらしく、2024年秋に工事を終え、社殿にご神体を戻す本殿遷座祭を営む予定だという。

出典:大山観光局
こちらが「大神山神社奥宮」の本来の姿。
大山は古くから出雲大社の祭神となった大神(オオナムチ神=オオクニヌシ)の宿る山として崇拝されており、「大神山神社奥宮」はその象徴ともいえる社だ。
大神山は大山の古い呼び名で、言い伝えによると、信仰の始まりは1600~1700年前に遡るという。
ちなみにその当時は「邪馬台国」の時代で、まだ日本に文字はない。
ということは…
あくまでも伝承で、考古学的には本当かどうか分からない(笑)。
なお、この一帯は「大山寺」と「大神山神社奥宮」の参拝者だけでなく、スキー場やキャンプ場の利用者と、ハイキングや登山を楽しむ人々の拠点を兼ねて開発が進んでおり、参道の麓には約600台を収容できる「県営大山駐車場」がある。
またその手前に建つ「大山自然歴史館」には、大山の自然や歴史が分かる、写真・模型・剥製などが数多く展示されており、大山の誕生から現在までの姿を、地質学と考古学の視点から学ぶことができる。
こちらも無料なので、参拝の休憩がてらに立ち寄ってみるのにお勧めだ。
そんなわけで、「県立大山駐車場」は日中に到着して大山か蒜山高原のどちらかを観光した後に車中泊がしたいという人にマッチする、”とっておきの車中泊スポット”とも云えるだろう。
「県立大山駐車場」の詳細は、以下の記事で確認を。
桝水高原(大山)
続いては、一般的な観光ガイドには必ずと云っていいほど登場する「桝水高原」だが、ここはグリーンシーズンには特に行くべき価値を感じるところではなかった。
前述した大山参道周辺の観光が無料で、この「天空リフト」に往復1000円は、さすがにどうかと(笑)。
しかも見える景色は、無料の「大山ナショナルパークセンター」からのものとさほど変わらないし、そもそも「恋人の聖地」になっているのは、他に人を呼べるものがない証かもしれない。
たしかに駐車場は驚くほど大きく、トイレも2ヶ所用意されているのだが、それはウインターシーズンのためのものだ。
ただ標高だけは高いので、せめて平坦なら車中泊のやりようもあるが、大山の無料駐車場の中でも一番と云える傾斜地なので、それにも使えない。
鍵掛峠(大山)
険しく露出した山肌が立ちはだかる、大山の南壁を真正面に拝む「鍵掛峠」は、標高約900メートルに位置する「大山・蒜山高原」屈指の絶景スポット。
とりわけ見事なのは、例年10月末にピークを迎える紅葉シーズンだ。
「鍵掛峠展望台」には、15台ほどが収まるトイレ付きの無料駐車場があるのだが、云うまでもなくピーク時の日中は、空き待ちのクルマで渋滞が生じる。
それを回避して、絶景をモノにする有効な手段はただひとつ(笑)。
以下の記事では、鍵掛峠における車中泊事情を詳しく解説している。
奥大山・木谷沢渓流(大山)
奥大山と云えば、サントリーのCMで一躍有名になった、天然水を思い起こす人が多いと思う。
実はその天然水は、「エバーランド奥大山」の無料駐車場横にある湧水口から、誰でも無料で好きなだけ汲むことができる。
そして「エバーランド奥大山」の県道を挟んだ向かいにある森の中に、宇多田ヒカルが登場するCMが撮影された「木谷沢渓流」がある。
ちょっと時代遅れでミーハーかもしれないが、駐車場からほとんど歩かずに行ける、自由奔放なクルマ旅ならではの旅先かなと思い、あえて紹介することに(笑)。
その美しいCMは、以下の記事でご覧いただける。
鏡ヶ成(大山)
蒜山高原と無料化された「蒜山大山スカイライン」で結ばれている、擬宝珠山・象山・烏ヶ山に囲まれた平地にある、高原リゾートエリア。
古くから「休暇村 奥大山」があり、冬は穴場のゲレンデとして、ファミリー層から支持されてきた。
我が家の子供達も、ここで春スキーのシーズンにシュプールが描けるようになった。
また高規格なオートキャンプ場が整備されたことで、グリーンシーズンは避暑を兼ねたライトなアウトドアを楽しむレジャー客で賑わっている。
鬼目台(蒜山)
ここから先は、岡山県側の大山の麓に近い「蒜山」の話になる。
「鬼面台」は、岡山県と鳥取県の県境を走る「蒜山大山スカイライン」の途中に位置する、標高900メートルの高台にある展望スポットのこと。
北側には大山を背景に、烏ヶ山・象山・擬宝珠山などの山が並び、振り向けば蒜山高原全体が一望できる。
こちらが普通車が約30台駐められる「鬼面台」の無料駐車場で、敷地の中には、売店と公衆トイレがある。
路面には見た目以上に傾斜があり、車中泊をするなら、明るい時間に来て場所をよく選んだほうがいい。
また売店は物販のみで、飲食設備はいっさいなし。品揃えも今ひとつで、おそらく来た人をガッカリさせていると思う(笑)。
観光バスがやってくるので、公衆トイレは大きくて立派。
ただし中に、ウォシュレットまでは用意されていなかった。
三木ヶ原(蒜山高原)
標高約500~600メートル地点にある「三木ヶ原」は、蒜山三座や大山が望める蒜山高原のメインスポットで、春から秋にはジャージー牛が放牧され、のどかな牧場風景が楽しめる。
牧場の他に、周辺には遊園地やワイナリー、さらにはオートキャンプ場などの施設が揃っているが、自転車専用道路も整備されており、爽快なサイクリングを楽しむ人が増えている。
塩釜の冷泉(蒜山高原)
「日本名水百選」のひとつに数えられている「塩釜の冷泉」は、1,123メートルの中蒜山の麓の谷間から湧き出る天然水だ。
湧水量は毎秒300リットル、水温が年中11度前後と冷たいことから、”冷泉”という名がついたという。
源泉から直接水を汲むことはできないが、「ひるぜん塩釜キャンピングヴィレッジ」のロッジ横に水汲み場があり、誰でも自由に利用できる。
GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)
2021年7月にオープンした、蒜山高原の新名所。
「GREENable(グリーナブル)」は、SDGsの未来都市をめざす岡山県真庭市が、「新国立競技場」を設計した隈研吾氏と、阪急阪神百貨店に協力を仰いで設立した、自然共生(SDGs)に関する行為やモノを紹介するコミュニティブランドの総称だ。
東京・晴海の「CLT PARK HARUMI」で、一度活用された真庭市産の木材・CLT(直交集成板)を移築し、新たなシンボルとして生まれ変わった「風の葉」と呼ばれる写真の象徴的建造物が、そのビジョン発信の拠点施設になるという。
敷地には「風の葉」の他に、サステナブルを実践できるグッズを販売するビジターセンター・ショップ、芸術文化を発信する真庭市蒜山ミュージアム、体験プログラムを提供するサイクリングセンター、CLTパビリオンなどがある。
真庭市は、製材端材や林地残材を発電燃料として活用するなど、ゴミを資源に変え、資源とお金の地域循環をつくる「回る経済」の実現に取り組んできたことが、SDGsの未来都市づくりの根底にあるようだ。
無料なので足を運んでみたが(笑)、これからの日本を担う若者や子どもたちには、このようなアートフルなプレゼンがいいのかもしれないが、中高年にはちょっと理解しづらく思う。
「持続可能な」は、「人間の活動が自然環境に悪影響を与えず、その活動を維持できることを意味しているとされるが、それはこういう大上段的、あるいは抽象的アプローチからより、酪農や林業などの農業が残る蒜山には、夏の打ち水で高原の爽やかな空気を呼び込むが如く、市民でも実現可能な等身大のアプローチのほうが、訪れる人の心に響くような気はした。
SDGsとは…
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)。
簡単に言うと「世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、世界のみんなで2030年までに解決していこう」という計画・目標のこと。
さて。
最後は番外編として「大山・蒜山パークウェイ」の沿線上に位置する、鳥取県側の大山の麓にある、2つのビュースポットをつけ加えておこう。
とっとり花回廊
「とっとり花回廊」は日本最大級のフラワーパークで、「道の駅奥大山」から約10キロ・クルマで15分足らずのところにある。
総面積50ヘクタールの広さを誇る敷地には、春はチューリップとポピー、5月から夏にかけてはユリやバラ、秋はコスモスにサルビア、そして冬にはサザンカ・ビオラ・パンジーなどが植えられ、秀峰大山を望む景観の中で、四季折々の花が楽しめる。
また敷地の中央には、直径50メートル・高さ21メートルのドーム型をした巨大なガラスの温室があり、ヤシなどの熱帯、亜熱帯の植物と、約1000株とも云われるさまざまな種類の洋ランを1年中見ることができる。
とっとり花回廊
〒683-0217鳥取県西伯郡南部町鶴田110
☎0859-48-3030
入場料
4月~11月/大人1000円
12月~3月/大人700円
鳥取県立むきばんだ史跡公園
漢字では「妻木晩田」と書く「大山」の麓に位置する広大な史跡公園で、国内最大級の弥生時代の集落「妻木晩田遺跡」を保存公開している。
広い園内には、竪穴住居や高床倉庫、墓などが復元されており、竪穴住居は自由に入って、建物内部を見学することができる。
また遺跡からの出土品は、こちらの「弥生の館むきばんだ」で見学できる。
加えて「むきぱんだ史跡公園」は、天気の良い日に丘の上から雄大な美保湾を見渡せる絶景スポットとしても有名だ。
鳥取県立むきばんだ史跡公園
〒689-3324 鳥取県西伯郡大山町妻木1115-4
☎0859-37-4000
見学無料
9時~17時(入場は16時30分まで)
第4月曜定休
年末年始(12月29日~1月3日)は休館
なお「大山パークウェイ」は「大山蒜山パークウェイ」と「美保湾パークウェイ」を合わせた総称で、ここから続く「美保湾パークウェイ」に関する詳細は、以下の記事にまとめている。
大山&蒜山高原の車中泊事情と車中泊スポット
まずクルマ旅の場合、「大山・蒜山高原」では前泊・後泊を含めて1泊すれば事足りると思う。
となると、どういう予定で現地入りするかがポイントになるのだが、一般的な「大山・蒜山高原」へのアプローチは、
❶中国自動車道から米子自動車道に入り、「蒜山インター」で降りて大山を目指す。
❷鳥取市内方面または米子方面から山陰道で大山を目指す。
だと思う。
❶のルートからアプローチする場合、前泊にお勧めなのは米子自動車道の「蒜山高原サービスエリア・下り線」になる。
落合ジャンクション方面からくると、「蒜山高原サービスエリア」のすぐ先が「蒜山インター」になるので、ぎりぎり使える。
「蒜山高原サービスエリア・下り線」で車中泊するメリットは、フードコートが22時まで開いていることと、ETC割引が得られる点にあるが、反面その日はお風呂に行くことができくなる。
汗ばむ季節の週末に行く場合は、「蒜山インター」で降りてすぐのところにある、「道の駅 風の家」で車中泊をするほうがいいかもしれない。
なお、蒜山高原にはもうひとつ「道の駅蒜山高原」があるが、ここはキャパがないわりにサイクリストたちが多く、混み合っている可能性がある。
いっぽう❷の日本海ルートでは、「道の駅 大山恵の里」が最寄りになるだろう。
ただ鳥取市内方面から来る場合は、手前の「道の駅 琴浦」のほうが、可燃物のゴミ箱もあって設備としてはよく整っている。
次に米子自動車道の溝口インター近くにある「道の駅 奥大山」についてだが、ここは特別車中泊に不向きな点があるわけではないが、筆者が提唱する「大山・蒜山高原」のベスト・ドライブルートからは外れた場所になる。
ただ、ここは米子方面から大山に向かう前に、前述した「とっとり花回廊」や「むきばんだ史跡公園」に立ち寄りたい人が、翌日に大山に向かうための前泊地に利用するには適している。
大山&蒜山高原 車中泊旅行ガイド

鳥取県 車中泊旅行ガイド


車中泊でクルマ旅 総合案内
クルマ旅を愉しむための車中泊入門

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