北海道に20回以上の車中泊旅行を重ねてきた、車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、2023年8月現在の洞爺湖の概要と観光&車中泊情報をご紹介。
このサイトは車中泊とクルマ旅関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、20回以上に及ぶ北海道クルマ旅による実取材をもとに、旅行者目線から書き上げたリアルな情報を掲載しています。
車中泊の旅人にとって、今の洞爺湖はステイではなくスルースポット
「洞爺湖」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2009.07.08
2010.08.31
2011.09.14
2012.08.06
2013.08.04
2014.07.28
2015.07.17
2015.08.05
2018.07.27
2021.07.23
※「洞爺湖」での現地調査は2022年7月が最終で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2023年8月に更新しています。
洞爺湖 車中泊旅行ガイド
洞爺湖のロケーション
「洞爺湖」がどんな湖かを紹介する前に、まずはどういうロケーションに位置しているかを説明したい。
というのは…
広大な北海道では、無尽に道路網が整備されているわけではない。
ゆえに同じように名の通った観光地でも、”わざわざ出向かなければ行けないところ”と、旅の道中にあって”ついでに立ち寄れるところ”に分けられる。
実際の旅では、この違いが「行ってみようという気になるかならないか」に大きな影響を与えるわけだが、「洞爺湖」が後者にあたるのは明らかだ。
「ニセコ」と「室蘭」を結ぶ国道230号が西岸を通る「洞爺湖」は、まさにクルマ旅に適した”立ち寄り先”で、展望台や湖岸に開かれた公園も多く、環境もよく整備されている。
そのため、かつては湖畔でキャンプや車中泊をする旅人も数多く見かけたのだが、現在は大きく様変わりし、ベテラン旅行者のそういう姿は、ほとんど見かけなくなってしまった…
そのあたり話は、「洞爺湖の車中泊事情」で詳しく語ろう。
洞爺湖の概要と見どころ
周囲に有珠山・昭和新山・洞爺湖温泉などがあり、北海道有数の観光地域となっている「洞爺湖」は、東西約11キロ・南北約9キロ・周囲約43キロのほぼ円形の湖で、面積は日本で9番目、火山活動でできたカルデラ湖の中では、屈斜路湖、支笏湖に次いで3番目の大きさを誇っている。
出典:国土交通省(画像をクリックすると拡大地図のページにジャンプ)
湖畔の南側を北海道道2号洞爺湖登別線、北西部を北海道道578号洞爺虻田線、東側を北海道道132号洞爺公園洞爺線が通っており、クルマで一周することも可能だ。
ただし見どころは、西半分の北と南の湖岸に集中している。
洞爺湖・北岸の見どころ
北岸の見どころは、洞爺湖の浜辺に出られる洞爺湖中央公園から小公園の一帯だ。
クルマは隣接して建つ、「とうや水の駅」の無料駐車場に駐められる。
「とうや水の駅」は、広い駐車場とトイレがある休憩スポットで、かつて「洞爺湖」の水上遊覧船の停泊所であったことから、そう呼ばれているが、実態は「道の駅」とほとんど変わらない。
館内には地元の野菜や加工品が揃う売店と、洞爺の歴史や自然が分かる情報コーナーなどがある。
同じようにトイレ休憩ができる施設としては、「道の駅 とうや湖」が近くにあるが、湖の景観は「水の駅」の方が断然いい。
とうや水の駅
〒049-5802
北海道洞爺湖町洞爺町100
☎0142-89-3108
営業時間
4~10月:9時~18時・無休
11~3月:9時~17時・月曜定休
駐車場
50台
景色を優先したいなら、サイロ展望台へ。
標高約170メートルの高台にある展望所から、洞爺湖・中島・有珠山・昭和新山が一望できることから、団体ツアーも必ず立ち寄る観光スポットが「サイロ展望台」だ。
施設の1階には、北海道の銘菓などを取り揃えた土産コーナー、2階にはレストラン、中庭にはテイクアウト専門カフェ「balher(バルハー)」を併設しており、トイレ休憩だけでなく食事もできる。
サイロ展望台
〒049-5832
北海道虻田郡洞爺湖町成香3-5
☎0142-87-2221
営業時間
8時30分~18時・不定休
駐車場
100台
洞爺湖・南岸の見どころ
いっぽう「洞爺湖」の南岸は、「洞爺湖温泉街」を挟んですぐ背後に迫る「有珠山」との関わりなしには語れない。
火山の噴火によってできたカルデラに、雨水がたまってできた洞爺湖は、4~5万年前に再び活発になった火山活動によって、中央部に中島が形成され、およそ2万年前にカルデラの壁南側に有珠山が誕生したと云われている。
以降、有珠山は間隔を開けて噴火を繰り返しており、文献に残る最大規模の噴火は、松前藩が江戸幕府に提出した「松前志摩在所山焼申儀注進之事」に記された、1663年8月12日であることがわかっている。
さらに1943年(昭和18年)の噴火では、何もないところから畑が隆起し、わずか2年あまりで標高398メートルの「昭和新山」が誕生した。
そして2000年(平成12年)3月27日。有珠山は再び激しい噴火を見せる。
今回の火山活動は1977年(昭和52年)~1982(昭和57年)以来となるものだったが、火山性地震の分析や断層の探索により、近日中の噴火が予知されていたことから、人命に関わる噴火発生を知らせる「緊急火山情報」が、噴火前に発表された初めての事例となった。
それを受けた、壮瞥町・虻田町(当時)・伊達市の周辺3市町では、危険地域に住む1万人余りの避難を噴火までに終え、結果としてひとりも死者を出さずに事なきを得ている。
有珠山周辺の火山噴火の痕跡は、2013年に「洞爺湖有珠山ジオパーク」となり、さらに日本初の世界ジオパークに認定され、現在は地元の大きな観光資源になっている。
その関連施設のひとつが「洞爺湖ビジターセンター」で、洞爺湖の自然や動植物に関する展示とともに、「火山科学館」を併設し、噴火の歴史や実際に被災した線路や軽トラックを展示すると同時に、巨大な3面スクリーンで噴火当時の様子を体験できるようにもなっている(上映時間13分)。
洞爺湖ビジターセンター
〒049-5721
北海道虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉142-5
☎0142-75-2555
ビジターセンター:無料
火山科学館:おとな600円
9時~17時
12月31日~1月1日は休館
また「洞爺湖ビジターセンター」「火山科学館」は、洞爺湖温泉街と隣接しており、湖畔には気持ちのいいプロムナードが整備されている。
クルマが無料で駐められるのは、こちらの「洞爺湖噴水広場」。
かつてはここでの車中泊も可能で、夜はライトアップされた遊覧船や、名物の洞爺湖ロングラン花火を見ることができたのだが、現在は禁止。
洞爺湖温泉街では、この「洞爺湖噴水広場」のみならず、すべての無料駐車場で車中泊はできなくなってしまった。
ちなみにこちらが洞爺湖温泉街のメインストリートだが、フットワークの軽い車中泊の旅人を締め出して以降、すっかり人影が減ってしまったようも見える。
かつては北海道のローカル情報誌・Hoに、こちらの「万世閣」が無料クーポンを提供していたので、筆者は何度か足を運んだことがある。
だが天然温泉とはいえ、洞爺湖温泉は昭和に発見された平凡な塩化物泉だ。
真っ昼間から行きたくなるほどの効能があるわけでもなく、著名な歴史上の人物が関わったというエピソードもないうえに、良心的な日帰り温泉施設もない洞爺湖温泉は、温泉街全体が高級リゾート感を全面に押し出しているところだけに、そういう特典がなくなれば、日帰り客が足を運ばなくなるのは当然だと思う。
洞爺湖最後の見どころは、上のマップの左中ほどにある「西山山麓火山散策路」だ。
「西山山麓火山散策路」は、2000年の有珠山噴火で誕生した火口群に整備された、火山の猛威や自然の雄大さを感じることができるフットパスで、被害を受けた建物や隆起した道路をそのまま残しているため、散策しながら当時の様子や自然の脅威を間近で体感できる。
たとえば、「北口ゲート」に近い木道の右側に見える段々になった登り坂は、噴火前までの国道230号だが、火山活動の影響で70メートルも隆起し、下り坂が登り坂になり、まるで断層のごとく変わり果ててしまっている。
こちらは噴火湾が見える高台からの光景で、手前に見えるのは噴火で破損したままの状態で保存されたお菓子工場だ。
ちなみに「西山火口散策路」は「北口ゲート」から「南口ゲート」に向かう一方通行で、周回することはできない。
所要時間は片道1時間程度。フットパスは未舗装でアップダウンもあるため、サンダルではなくスニーカーのほうが安心だ。
なお「西山山麓火山散策路」の見学は無料で、温泉街から近い「北口ゲート」には、有料と無料の駐車場がある。
西山火口散策路
見学無料
☎0142-75-4400 (洞爺湖町観光振興課)
営業時間
7~18時(10月1日~11月9日は~17時、11月10日は8~16時)・無休
※11月11日~4月中旬は閉鎖。その他悪天候時は閉鎖
※「西山火口散策路」の無料駐車場にガイドします。
洞爺湖の車中泊事情
さて。
ここまでにも少し触れてきたが、現在の洞爺湖周辺に点在する公園の無料駐車場では、全面的に車中泊は禁止されている。
かろうじて道の駅があるので、車中泊ができないわけではないが、曙公園を筆頭に低料金で利用できたキャンプ場も閉鎖となり、ますます肩身は狭くなってきた。
そうなるに至った経緯と、現時点での車中泊が可能なスポットは、長くなるので別記事にしてまとめている。
洞爺湖自体は風光明媚で見どころも多く、冒頭に書いたように旅先としては悪くないだけに、ぜひ合わせてご覧いただき、とりあえず今は、現行ルールの中でお楽しみいただきたいと願うばかりだ。