この記事は車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
僕らは「北の国から」の聖地を忘れない。
筆者にとっての「北の国から」の聖地は、麓郷に残る「丸太小屋」でも「石の家」でもなく、JR富良野駅前にあったこの資料館だ。
既にご存知の方も多いと思うが、「北の国から」資料館は2016年8月をもって閉館し、1995年から約20年にわたるその歴史に幕を閉じている。
閉館の理由は、建物の老朽化と来館者の減少とされるが、それも時代の趨勢…赤字経営を続けることは難しいのだろう。
そこで「北の国から」資料館に展示されていたものを、いくつかここで公開することにした。
資料館そのものがなくなった今、展示物の公開は「資料館の存在価値」を多くの人に再認知してもらうよいきっかけになると思う。
お馴染みの主題歌「遙かなる大地より」の楽譜原本。
この曲は依頼者・倉本聰と作曲者・さだまさしのやりとりにより、小一時間ほどで完成したと云われているが、そこには双方が語る「裏話」があるようだ。
さだまさしによれば「歌詞をつけない選択には勇気がいった」そうだが、倉本聰から「この曲には言葉はいらないと云われた」らしい。
いっぽうの倉本聰は、実は主題歌がハミング調であることが気に入らなかったようで、後にテレビのインタビューで、「”あ~”と”う~”だけで、『作詞さだまさし』もないもんだよね」「作詞だよ!?」「図々しい」と語っている。
どこまで本当かはわからないが、ネタとしては面白い(笑)。
「その頃の倉本聰」で紹介した、純と蛍の母親(いしだあゆみ)とおばさん(竹下景子)の年表。架空の人物であるにもかかわらず、まるで実在したかのように描けるのは、このような緻密な作業が背景にあるからにほかならない。
同じく見えないところで『北の国から ’98時代』(後編)にリアリティーを付加していた、シュウこと宮沢リエの努力の一面。
シリーズの中でも最高傑作との呼び声が高い「北の国から’87初恋」のラストシーンのセリフと、ドラマに使われた(かどうかはわからない)泥のついた万札。
このお金が、次の「’89帰郷」の引き金になる。
資料館の展示はシリーズごとに分かれており、スチール写真を通じて懐かしい名場面が蘇る。
最後は石の家の実寸サイズの室内模型。
なお、資料館に飾られていた約500点の展示物は別の場所に移され、ドラマの登場人物「中畑のおじさん」のモデルとされる仲世古善雄氏のもとで、保存管理されているそうだ。
いずれまた、スポットライトの当たる場所に陳列される日を楽しみに待ちたい。
【参考】「北の国から」資料館を守り続けてきた、仲佐古善雄氏のインタビュー記事