この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」をリライトしたものです。
紋別海洋公園で遭遇した、おせっかいなオヤジたち
富良野からの移動の途中、渓流釣りとマウレ山荘の良泉を目当てに、丸瀬布で泊まった。マウレ山荘のお湯はヌルツルの弱アルカリ性でとても気持ちがいい。
今ではすっかり寂しくなった「ほっ」の無料クーポンだが、ここは数少ない昔からの施設だけに頑張って欲しいところだ。この日は電話をもらった知り合いと合流。夜はキャンプ場で釣りたてのニジマスとヤマメを肴に盛り上がった。
さて。天気予報は晴れだったにもかかわらず、明け方には滝のような大雨に遭遇。一夜で予報は「大雨・洪水警報」に変わっていた。
丸瀬布のキャンプ場は川の横にあるため、長時間大雨が続けば、氾濫して逃げ道を失う可能性がある。そこでネットで雨雲の動きを見ながら対策会議(笑)。
1.2時間で大雨の圏外になることがわかり、屋根の下で片づけられるものから整理し、小雨になったところで一気に撤収して、「晴れ」の予報が出ている紋別に向かった。だが、紋別もまた雨だった。
そこで利用したのが上湧別にある五鹿山公園オートキャンプ場のバンガロー。北海道では3.4千円で、このクラスのバンガローを借りることができる。
あとは500円でフリーサイト料金を払えば車中泊も可能になる。この日は先にチューリップの湯に入り、早い時間から海鮮鍋をつつくことになった。温泉を除く宴会場・飲み代・食材代は、5人で割勘するとわずか2500円で収まった。
そして翌日。ようやく紋別の空に快晴が戻ってきた。
しかし、それもつかの間。2.3時間で天気はコロコロ変わり、今はうっすら霧が出ている。
紋別海洋公園は、クルマ1台400円を支払えば、そのシーズンは何泊してもかまわないという超太っ腹な施設で、よく管理された水場と水洗トイレが使えるうえに、ゴミの廃棄もできる。
以前はそれでも利用者がまばらだったが、3年前にまきば公園の素晴らしいパークゴルフ場ができたことから、今やシルバー世代には虫類なみの人気スポットと化している。
そこに夕方、美して逞しい自転車の旅人がやってきた。
最初は筆者たちの隣にテントを張って寝る準備をしていたのだが、そこへ団塊世代の親父がやってきて、都合も聞かず、なかば強引にテントごと自分たちの方へ拉致していった(笑)。
話しかける程度ならわかるが、言葉もロクに通じない旅人に、そこまでやるのはどうなんだ。
彼女はイギリス生まれで、アジアの諸国を周りながら、既に日本には11ヵ月滞在しているという。
ゆえにもう「パンダ扱い」されることには慣れているようだった。九州の温泉地のタオルを持っていたので、たぶん南から北上してきたのだろう。
案の定、彼女は親父たちが寝静まった10時すぎからスマホで「仕事」を始めた。
団塊のお父さん、キャンピングカーとは違いテントで長旅をするには、限られた時間でしなきゃならないことがたくさんある。もちろん歓迎はありがたいが、その時間のしわ寄せがどこかに来ることを理解したうえで、見守るべきか手を差し伸べるべきかを見定めることが大切だ。
それは日本の若者に対しても云える。
今は一回りも世代が違えば、もう同胞でも異文化コミュニケーションになる時代だ。単一の価値観では、せっかくの好意が仇になってしまう時もある。