この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」をリライトしたものです。
フェリー火災にヒグマ騒動、そして高温多湿
それにしても… 今年の北海道の旅では、異変が立て続けに起きている。とりわけ驚いたのは、31日に苫小牧沖で発生したサンフラワーの火災だ。
1週間が過ぎても火災は鎮火できていないようで、乗客の方々はその後どうされているのか、船内に残されたクルマや手荷物はどうなっているのか、さらに事故以降の予約はどうなってしまうのか… とても他人事とは思えず、気になるところだ。
特にキャンピングカーを載せている人は、気が気でないに違いない。中にはDIYした装備や、古いがお気に入りの機材など、仮に全額弁済されても元通りには戻せないものもあるだろう。
だが、出火場所が車両甲板だけに、無傷であるとは考えにくい。
いっぽう、こちらは7月30日にマスコミ報道された知床でのヒグマ騒動。
写真は斜里町の自然ガイド若月識さんが26日の午後、世界遺産登録地域内の国道で自動車内から撮影したものだ。
報道によれば、若月さんの車の前に停車していたレンタカーが、約5メートル離れた道路脇の母グマ1頭と子グマ2頭を見物中、車を動かし約1メートルまで近づいたところ、体長約1・5メートルの母グマが路上へ出て、レンタカーに前足をかけて3度揺すったという。
さすがにこれには驚いた。
というのは、偶然にも同じ日の早朝6時24分に、ほぼ同じ場所で筆者もヒグマを見ていたからだ。
2頭の子熊を連れていたので、十中八九、同じ個体に違いないと思うが、ハイエースを揺すりにはこなかった(笑)。
理由はたったひとつ。1メートルまで近づかなかったからだ。
これは2012年に撮影した若いオスのヒグマだが、谷から上がってきて筆者のハイエースと前のクルマの間を悠々とわたり、山に消えていった。
筆者の経験では、彼らは個々に「自分なりの距離」を持っているようで、中にはその距離が10メートル以上の個体もいれば、3メートルほどの個体もいる。
よく観察していれば、その距離感は何となくわかってくるが、ヒグマがこちらを無視している時は、その距離の圏外にいるということになる。
この一件に関して知床財団の事務局長は、「遭遇した時はクマの進路をふさがず、すぐ立ち去って」とコメントしたそうだが、たぶん…そうする人は少ないと思う(笑)。
見たい人には「遭遇した時は、そのまま動かずそっと見守ってやって」のほうが現実的だ。もし貴方が立ち去っても、そこにはすぐに次の観客がやってくる。ヒグマからすれば何も変わらないわけだし、既に「慣れっこ」になっているかもしれない。
そもそも、フェンスで囲める知床五湖やキャンプ場とは違い、隙間だらけの知床横断道路に出没するヒグマを規制することは不可能に近い。
しかも今は、そこを丸腰のまま自転車に乗る人が数多く通行し、登り坂ではそれを押して歩く高齢者や女性を見かける。傍から見ている我々はハラハラするが、当人たちは全然平気だ。
すなわち、これは北アルプスにやって来る登山客となんら変わらない。そう「自己責任」でというしかない。
そんな中で警告できるのは、スマホで撮影することの危険性だろう。望遠機能の弱いカメラで撮ろうとするから、近づきたくなる。
異変の最後は「暑さ」。
一昨日の虫類では、なんと気温36度を体験したが、今年の北海道はただ暑いだけでなく、湿度が高い。たまたま東京から順次北上してきたため、何枚か速乾性のTシャツを持参していたのだが、連日の暑さで北海道に来てから買い足した。
長袖を買った経験はあるが、夏物を買うなんて、本当にどうかしている!
さて、現在はその猛暑を避けて道東の尾岱沼のキャンプ場に来ているのだが、霧雨で気温はなんと13度。今度はFFヒーターをいれてもいいくらいの「寒さ」の中でこのブログを書いている。
北海道というのは、そういうところ。いつかは慣れる(笑)。