この記事は車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

襟裳岬のアザラシを自力で見るのは、限りなく不可能に近い。
筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2009.07.09
2011.07.05
2015.08.05
2017.07.04
2021.08.03
襟裳岬 アザラシ撮影&車中泊ガイド 【目次】
プロローグ
襟裳岬のアザラシは、肉眼や並の望遠鏡ではまず見えない。
プロローグ
襟裳岬のアザラシは、肉眼や並の望遠鏡ではまず見えない。
襟裳岬と云えば、どの紹介サイトにもゼニガタアザラシの写真が掲載されているが、「棲んでいる」のと「見られる」、さらに「撮れる」というのは大きく違う(笑)。
襟裳岬における最大のアトラクションは、晴れた日にこの岬の突端からアザラシを探すことであり、「国民総カメラマン」と呼べる現代では、誰だってできることなら自らのカメラで、野生のアザラシを撮ってみたいと思うのは当然だ。
しかし大半の紹介サイトは「風の館」から見られるというだけで、その話にはほとんど触れてもいない。
ちなみに、この鮮やかなゼニガタアザラシの写真は、たぶんカヤックでそっと奴らがいる岩礁に近づいて撮影したもの…
もちろん筆者を含めて、普通じゃ到底撮影できない、素晴らしいチャレンジの末の大作だ。
ただこの写真は「撮影ガイドの見本」にはならない。
写真愛好家が見たいのは、歩いて行ける襟裳岬の突端から撮影した写真だ。
すなわち、そこからアザラシは見えるのか、撮れるのか。
筆者は、できもしないことを「できるかのように紹介する」のは性に合わない。
ゆえに最初に結論を書こう。
穏やかに晴れている日の襟裳岬のアザラシは、この一本道のゴールにある「襟裳岬突端」から、遥か沖合に続く岩礁の上に寝そべっている日がほとんどだ。
具体的に云うと矢印のあたりに群れているのだが、突端から岩礁の先端までは約7キロ、仮にその中間あたりにいるとしても、焦点距離は3.5キロになる。
ちなみに彼女が使っている双眼鏡は、バードウォッチングに最適とされるタイプで倍率は8倍。
望遠鏡の倍率は、「10倍」で100m離れたところにあるものが、裸眼で10mの距離と同じに大きさ見えることを意味している。
ということは、ここでは350mよりさらに遠いところにいるアザラシを、裸眼で目を細めて見るのと同じ…
すなわち、ほとんど役に立たない(笑)。
襟裳岬の「風の館」には、これと同じ「フィールドスコープ」と呼ばれる望遠鏡があり、その接眼レンズの倍率はおそらく30~50倍だ。
50倍の接眼レンズを装着したフィールドスコープで、1000m先のものを見た場合、20mまで近づいて肉眼で見た状態とほぼ同じになる。
つまりこっちなら60m先のアザラシを裸眼で見ていることになり、はっきりと様子を伺うことができる。
これで襟裳岬のアザラシをスマホで撮ろうなんていうのは、とんでもない妄想であることがお分かりいただけたと思う。
ただ、だからといって突端から撮影できないというわけではない。今は機材を選べばこの程度までなら可能だ。
筆者が使用したのは、ニコンのP900という野鳥撮影機能を備えた超望遠カメラで、ご覧のようにコンパクトながら、なんと画像が荒れない光学ズームで、83倍の望遠写真が撮影できる。
これまで北海道では、このカメラでヒグマ・オジロワシ・タンチョウ、さらにはナキウサギやラッコも手中に収めてきたが、北海道でアニマルウォッチングをするなら、持っていても損はしない逸品だ。
筆者の経験上、北海道の中でも襟裳岬ほど遠くて辿り着くまでの道のりが辛いところはない。
それだけに、まずは真実を知ったうえで、よく検討してみていただきたい。
襟裳岬のお勧めアザラシ見学方法
襟裳岬には、今では欠かすことのできない「観光資源」のゼニガタアザラシを、たったの300円で空調が効いた快適な建物の中から、手ぶらで見せてくれる施設がある。
それが「風の館」だ。
ガラス張りの展望スペースには、スタッフが毎日開館前にアザラシの居場所に照準を合わせたフィールドスコープが置いてあり、それを覗けば「なにひとつ苦労することなく」野生のアザラシが観察できる。
アニマルウォッチャーにすれば、あまりに他力すぎてつまらないかもしれないが、岬の突端から観察するつもりの人も、まずはここで「その日のアザラシの状況」を確認してから行く方がいい。
先端まで行ってアザラシがいないと分かれば、疲れが倍増するだけだ(笑)。
また「風の館」はちょっとしたアザラシ・ミュージアムになっており、その生態なども紹介している。
さて。
「風極の地」とも呼ばれる襟裳岬は、風速10m/s以上の風が吹く日が年間260日以上もある、日本屈指の強風地帯だ。
たとえ到着時がそよ風でも、天候は急変しやすく、もうこうなると外には立っていられなくなる。
本来の「風の館」はその風をテーマにした博物館で、中には風速25m/sの強風を体験できる設備もある。
入場料は大人でも300円ぽっきりと格安。
開館時間は、5月から8月が9時から18時まで(受付最終17時30分)、3月から11月は9時から17時まで(受付最終16時30分)。なお営業期間中は無休。
楽曲「襟裳岬」のエピソード
余談になるが、楽曲の「襟裳岬」は吉田拓郎が歌えばフォーク、森進一が歌うと演歌になってしまうのだが(笑)、筆者と同年代なら、知らないどころかカラオケのレパートリーに入れている人も多いと思う、作詞:岡本おさみ・作曲:吉田拓郎のコンビによって生み出された1970年代の名曲だ。
サビに使われた「襟裳の春は何もない春です」というフレーズを聞いた地元の人たちが、「何もないとはけしからん」と大反発した話は有名だが、それは襟裳岬を訪れた岡本おさみが、「何もないですがお茶でもいかがですか?」と現地で温かいもてなしを受けたことに感動した実話がもとになっているという。
結局は大ヒットして、1974年(昭和49年)の第16回日本レコード大賞を受賞し、えりも町から森進一に感謝状が贈られ、この歌碑がつくられた。
その「襟裳岬」を聞いたことがない人、懐かしむ人は、こちらでどうぞ。
筆者はねっちりもっちり歌う森進一より、ちょっとぶっきらぼうで投げやりな感じの拓郎バージョンのほうが好きだ(笑)。
なお楽曲「襟裳岬」の歌碑は、「風の館」の展望台のそばに2つある。もうひとつは島倉千代子のヒット曲ということだが、さすがにそれは筆者も知らない。
まったく歌詞が違うので、写真を撮るなら間違わないよう気をつけよう。
襟裳岬のロケーションと車中泊事情
ここからはクルマ旅の話になる。
襟裳岬へのアプローチには、上の青(苫小牧ルート)・赤(帯広ルート)・黄色(釧路ルート)の3つがあるが、青の苫小牧からは約180キロ、クルマで休まず走り続けても3時間半はかかる。
ただこのルートは、途中にサラブレットに会える新冠(にいかっぷ)があるので、そこで休憩を挟めばリフレッシュできる。
国道235号は信号が少なくスムーズに走れるが、そのぶん睡魔に襲われやすく、またスピードも出やすい。
停まることができない道というのは、想像以上に疲れるものだ。
それに朝9時に苫小牧を出たとしても、のんびり休憩や昼食をしていたら、襟裳岬に到着するのが午後3時過ぎということになりかねない。
襟裳岬駐車場の車中泊好適度
襟裳岬の駐車場は無料でご覧の通り広々としているが、大きなうねりがあって中央部が凹んでいる。
右手に見えているのは、売店と食堂がある「えりも岬観光センター」で、夏は8時から18時まで営業している。
こちらが24時間利用できる公衆トイレで、前には可燃物のゴミ箱が置かれている。
中には洋式もあるが、さすがにウォシュレットまでは備えていない。
なお、最寄りの温泉は
とまべつ憩いの湯ちゃっぷ
襟裳岬駐車場から約8キロ・10分。2021年4月にリニューアル
☎01466-4-2177
おとな400円
夏期: 11時〜20時(冬期は19時まで)・月曜定休
コンビニ
セイコマートまで約13キロ。
スーパーマーケット
「コープさっぽろ えりも店」まで約14キロ。
車中泊環境としては一通り揃っているものの、ここで怖いのは強風だ。
安全を期して道の駅での車中泊を望むなら、襟裳岬の見学を遅くても5時には終えて、陽のあるうちに移動したい。
またリスクを回避するため遅めに苫小牧を出て、新冠か三石の道の駅で前泊し、翌朝から襟裳岬に向かう手もある。

お勧めのルートは赤(帯広ルート)
冒頭に記した通り、筆者は襟裳岬に5度(実際は2002年を加えて6度)足を運んできたが、還暦を過ぎてからはこの都市部への最短ルートを愛用している。
仮に青の苫小牧ルートを使ってアクセスしたとしても、襟裳岬を周回後に有名な「黄金道路」を走り抜けて国道236号に合流すれば、「道の駅コスモール大樹」までは約70キロ、1時間半ほどで到着できる。
しかも現在は、少し北にある「道の駅忠類」のそばまで「帯広広尾自動車道」が延伸しており、そこから先は高速道路も利用できる。
帯広を核とする十勝エリアは、見どころも道の駅も充実しており、襟裳岬は十勝観光の「日帰りオプション」と考えてもいい。
それに対して黄色の釧路ルートは、「道の駅うらほろ」まで約123キロ・クルマで2時間半近い道のりを、再び国道336号で延々と海岸線を走らなければならず、もはや苦痛は限界に到達する(笑)。
襟裳岬アクセスマップ
日高エリア 車中泊旅行ガイド


日本全国 車中泊旅行ガイド
クルマ旅のための車中泊入門サイト
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