この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

世界遺産・吉野山は、一筋縄では把握できない「奥深き聖なる山」
世界遺産 吉野山【目次】
吉野山には3つの「顔」がある。
吉野と云えば桜でしょ。
それは間違いではないが、100点満点中、せいぜい10点程度の答えだと思う。
まして関西在住者であれば、これではさすがに寂しすぎる(笑)。
とりあえず「桜の名所」であることの次、いやその前に、吉野山が「世界遺産」に登録されていることから始めよう。
ちなみに「世界遺産」に登録されたことと、「桜の名所」であることに相関関係はあるが、「桜が美しいから世界遺産になれた」わけじゃない。
むしろ逆で「世界遺産に登録された理由が、桜の名所になるきっかけになった」というのが正解だ。
そしてもうひとつ、「桜の名所」「世界遺産」とともに、吉野山のことで知っておきたいのが、日本の「南北朝」の話だろう。
南北朝を簡単に説明すると、1333年に鎌倉幕府を倒し、政権奪回を果たした後醍醐天皇は、「建武の新政」をスタートするが、公家寄りの政策に走ったことから、倒幕の立役者のひとりである武家の足利尊氏の反感を買い、袂を分かつことになる。
その結果、足利高氏が従来からの都である京都(北朝)を支配し、後醍醐天皇は吉野山に逃れて、そこで朝廷(南朝)を構えることになった。
そのあと南北朝時代は57年間にわたって続くが、足利幕府三代将軍・義満によって、再びひとつに統一された。
京都の御所とは比べるべくもないが、吉野山には後に天下人となる豊臣家の庇護を受けた、南朝ゆかりの史跡が今も残されており、その中のいくつかは世界遺産の構成資産に名前を連ねている。
というわけで、歴史を無視して吉野山に出かけるというのは、有名な老舗で買ったモナカの、中身を捨てて皮だけ食べようとしているようなもの(笑)。
桜が見たいだけなら、近くの明日香村にある石舞台古墳のほうがいいと思う。
世界遺産 吉野山の正しい理解
吉野山は、単独で世界遺産に登録されたわけではない。
行者が吉野山から修行の場として行き来していた大峰山を合わせ、「高野山」「熊野三山」及び、それらを結ぶ「熊野古道ほかの参詣道」とともに、2004年に認定された「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産に名を連ねている。
ゆえに本当に吉野山の世界遺産として価値を理解するには、大元となる「紀伊山地の霊場と参詣道」のことから学ぶ必要があるのだが、この紀伊半島の大半に及ぶ広大な世界遺産を理解するのは、土地勘がある関西在住者でも骨が折れる。
なので、とりあえず以下の記事にだけ目を通しておけば十分だ(笑)。

いつから、どうして桜の名所に?
冒頭で少し触れたように、この話は「なぜ吉野山が世界遺産に登録されたのか?」という問いの答えの裏返しで、このスペースには到底収め切れない。
ということで別立てで以下の記事を用意している。
吉野山の桜 見頃・見どころ・マイカーアクセスガイド
もしかすると、検索エンジンからこのページに訪問いただいた方が、いちばん知りたかったのは、この話かもしれない(笑)。
こちらでは吉野の歴史にほとんど触れず、ややこしい話は抜きでまとめている。
吉野山に残る、著名人ゆかりの史跡
もともと修験道の聖地だった吉野山は、昔から観桜期を外せば、山伏以外にほとんど来る人の少ない静かな場所だった。
それゆえ古来より、隠遁生活をここで過ごした著名人ゆかりの史跡も残されており、中には「紀伊山地の霊場と参詣道」とは直接的な関連性の薄い「世界遺産」もある。
そしてそれらを訪ねて歩くのも、古式ゆかしき吉野山のひとつの観光法だ。
吉野山の車中泊事情
かつては吉野山から4キロほど離れた吉野川の河川敷にある「リバーフィールドよしの」が無料で使えたことから、ここでの車中泊を勧めていたが、現在は有料化され、1泊2日なら3000円が必要になっている。
正直、この環境での3000円は高すぎる(笑)。
そのため、約10キロ・クルマで15分ほどのところにある「道の駅 吉野路大淀iセンター」で車中泊をするのがベターだろう。
桜と紅葉の季節は、この道の駅から近鉄「大和上市駅」の近くにある、1日最大300円で利用できる「カーパーク大和上市駅前」にクルマを置いて電車でアクセスするのが一番無難。
大和上市駅から吉野駅までは2駅で運賃は片道180円。所要時間はたったの4分しかかからない。
また45分ほどかかるが、近鉄「飛鳥駅」に隣接する「道の駅 飛鳥」で車中泊をすれば、クルマを移動させる必要がない。
長時間駐車が気になる人には勧めないが、この道の駅ではレンタサイクルの貸し出しを行っており、それを利用者に促進している(笑)。
吉野山 車中泊旅行ガイド
熊野古道 車中泊旅行ガイド
紀伊半島全域に及ぶ、日本を代表する広大なる世界遺産の愉しみ方をご紹介。この世界遺産なくして、紀伊半島は語れない。
※記事はすべて外部リンクではなく、オリジナルの書き下ろしです。


車中泊でクルマ旅 総合案内
クルマ旅を愉しむための車中泊入門

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