「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介します。


猫舌には完食不能とも思える、スープの熱さが衝撃的
「元祖帆立ラーメン間宮堂」は、宗谷岬の山の手に広がる「宗谷岬公園」の入口に昔からあるラーメン店だが、実のところ、筆者はさほど興味を持ってはいなかった。
なぜなら、ホタテは北海道ではけして珍しいものではなく、ラーメンに入れるよりは刺身やバター焼きのほうがおいしいし、生を安く手に入れる方法も店も知っていた。
それに北海道のラーメンといえば、函館の塩・札幌の味噌・旭川のしょう油と相場は決まっていて、具材がどうのこうのというのは、どちらかといえば邪道に近いイメージを抱いていた。
そんなわけで、筆者はこれまで5回以上宗谷岬に足を運んでいたのだが、暖簾をくぐったのは2021年が初めてだった。
この年は「白い道」の撮影に訪れたのだが、到着時は空が雲に覆われており、それが切れるまでの時間潰しに、名物の帆立ラーメンを食べてみることにした。
ログハウス仕立ての店内の壁には、有名人のサイン入り色紙があちこちに貼られていて、その有名ぶりが伺える。
オーダーしたのは塩帆立ラーメン。
道北は帆立の産地だけあって、今はきっと帆立ラーメンを出す店も多いのだろう。ゆえに間宮堂では、それに「元祖」の冠をつけている。
トッピングは、ホタテ・メンマ・ナルト・麩・ネギで、たしかに帆立はおいしかったが、予想通りスープからは、それほど帆立のダシが効いている感じは伺えない。食べログの投稿を信じていくと、ここでは期待を裏切られる(笑)。
つまり間宮堂の帆立ラーメンは、「具材に帆立が丸々使われている」という意味でのネーミングなのだ。
ただ塩ラーメンのスープとしては、十分満足に値するレベルだった。
それより筆者が驚いたのは、そのスープの熱さ。いつまでたっても冷めてくれないので、しまいには熱さで味が分からなくなりそうだった。
その理由は鶏油にある。
名店のラーメンの中には、冷めないように豚の背脂を入れるところがあるが、間宮堂のスープは繊細な帆立の味をかき消さない鶏の油が使われおり、上手く防寒の役割を果たしている。
麺はそのスープがよく絡む縮れ麺で、粉っぽさも感じない。
驚いたことにその麺は、稚内駅前の人気ラーメン店「たからや」と同じ、地元稚内の北海屋製麺所のものだというのだが、もしそれが本当なら、麺の茹で方は「間宮堂」のほうが数段上ということになると思う。

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