この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊ならではの旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
舞台はサンピラーパークと、ふうれん望湖台自然公園
車中泊の映画「星守る犬」のロケ地 名寄【目次】
車中泊の映画「星守る犬」のストーリー
名寄の「北海道立サンピラーパーク」は、2011年に封切りされた車中泊と愛犬の映画「星守る犬」のロケ地で、その「名残」が今も少しだけ残されている。
「星守る犬」は大ヒットした国民的映画というわけではなく、上映から10年を経て「いまさら感」は拭えないが、筆者と同世代で、ペットとともに車中泊で北海道を旅する人の中には、ご覧になられた人も多いと思う。
そこで簡単にストーリーを振り返ろう。
「星守る犬」は、2011 年6 月に公開された西田敏行主演の日本映画。
原作は村上たかしのアニメで、ごく普通の中年男性が職と家族を失い、最後に残った愛犬ハッピーと共に過ごした、切ない車中泊旅の記憶を辿るストーリーだ。
キャッチコピーは、「望みつづけるその先に、きっと希望があると思う」。
期待とは裏腹に、主人公は最後にクルマの中で孤独死してしまうのだが、その奥にあった当人だけが抱く「希望」にスポットを当てているのだろう。ただ言葉からは、なかなかそこまでは伝わってこない。
筆者は封切りされた2011年に現地に足を運んでいるのだが、当時は映画に使われた主人公・奥津京介の家が、サンピラーパークのひまわり畑の近くに保存されていた。
他のロケ地と同様に、家の中までは公開されていなかったが、こういうシンボリックな建物が残されているだけでも、映画は忘れ去られず蘇るものだと思う。
だが残念なことに、現在は取り壊されたか、どこかに移築されているようだ。
現在サンピラーパークで見られるのは、映画で奥津京介が乗っていた冒頭のフォルクスワーゲンと、天文台「きたすばる」の前に飾られたハッピーのモニュメントだけになっている。
北海道立サンピラーパーク
大きく3つのエリアと11のゾーンからなる超大規模公園で、入場は無料。中でも、「星守る犬」に登場する「ひまわりの花畑」は有名で壮大だ。
北海道立サンピラーパーク オフィシャルサイト
エリア内には、天文台「きたすばる」と、コテージと区画オートサイトを持つ「森の休暇村」もある。
ふうれん望湖台自然公園
「星守る犬」の名寄に残る、もうひとつの感慨深いロケ地が「ふうれん望湖台自然公園」だ。
ここは西田敏行演じるおとうさんと、ハッピーが最後にたどり着く場所で、写真のキャンプサイトで映画のラストシーンが撮影されている。
また公園の一画には、西田と玉山の手形レリーフ入りの「星守る犬メモリアル石碑」もある。
エピローグ
映画「星守る犬」が上映された2011年といえば、「第一次車中泊ブーム」の真っ只中… それもあって、この作品が映画化されたのかもしれない。
愛犬とともに過ごした、ひとりの中高年の人生を描いた映画としては興味深かったが、車中泊的見地からすると、それが「現実離れした車上生活」として描かれるのは、あまりいい気がしなかった。
これは高倉健主演の映画「あなたへ」にも、先日放送された「絶メシロード」にも共通している話だが、なぜマスコミは車中泊を哀愁とともに描きたい、いや描かなければならないのだろう?
確かにやらない人からすれば、車中泊自体が「浮世離れ」しているのかもしれないが、我々のように普段から車中泊で旅をしている人間からすれば、もっと実勢に近いかたちで車中泊を描いてもらいたい。
それはたぶん、火野正平が自転車で全国を旅する、NHKの「こころ旅」のような番組だと思う。
多くの車中泊の旅人は、これくらい肩の力が抜けているし、気楽に自由に、そして何より刹那的ではない旅を楽しんでいる。
マネといわれようが、どうだろうが、実際に車中泊を楽しんでいる人たちが見たいのなら、それでいいんじゃないのかな。
筆者はいつかそういうコンテンツを、Youtubeでリリースしてみたい。