「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「豊富温泉ふれあいセンター」に隣接する駐車場では、車中泊も可能。
豊富温泉は大正14年に行われた石油の試掘で、地下約1キロ地点から高圧の天然ガスと共に43℃のお湯が噴出したことがきっかけで開湯。昭和のはじめに川島旅館を筆頭に8つの旅館が開業し、現在の温泉街が出来上がった。
町営温泉入浴施設 豊富温泉ふれあいセンター
その豊富温泉の中で、クルマやバイクの旅人から高い人気を博しているのが、町営の「豊富温泉ふれあいセンター」だ。
ここには源泉をかけ流しにする一般客用の浴場のほかに、湯温を低く抑えた湯治用の浴場も完備され、レストラン、売店、休憩室もある。
豊富温泉のお湯
行けば誰もが驚くであろう、豊富温泉の黄濁したお湯は、石油や天然ガスとともに湧出してくるため油分を含んでおり、鮮烈なコールタールの匂いがする。
そのため同じ北海道に湧く植物由来のモール泉でも、有名な十勝川温泉とは比較にならないワイルドさで、慣れるまで息苦しさを覚えるかもしれない。
人気の理由はワイルドさだけではない。
弱アルカリ性の豊富温泉のお湯は、保湿保温効果が高い美肌の湯で、成分に多く含まれる重曹・ホウ素は、皮膚を綺麗にするだけでなく殺菌効果も高い。しかも高張性なので、温泉成分が体内に浸透しやすい特徴を有している。
そのため、乾癬やアトピー性皮膚炎に効果がある湯治湯としても有名で、その療養に訪れる人も多いという。
豊富温泉ふれあいセンター
☎0162-82-1777
大人510円 ※65歳以上300円
10時~22時(受付最終21時30分)
元日・整備日(毎年4月2週目の5日間)は定休
※年末年始は短縮営業
車中泊について
「ふれあいセンター」の第三駐車場には野外トイレがあり、豊富温泉のフェイスブックを見るかぎり、ここでの車中泊は容認されているようだ。
2021年7月時点の最寄りの道の駅は、約30キロ離れた「道の駅てしお」になるので、豊富温泉に行くならここでの車中泊は楽だと思う。
また「ふれあいセンター」の駐車場に隣接する公園には芝生のエリアがあり、ここではテント泊も容認されているようだ。
さすがにテント泊で本当の湯治に来る人は稀有だと思うが、この北海道らしい包容力が、末永く続くことを祈りたい。
湯治とは…
専門医から入浴方法や体調の維持管理の指導を受けながら、特定の病気や怪我の治療を目的に、長期間(少なくとも一週間以上)温泉地に滞留する医学療法のひとつ。
すなわち、癒しや観光目的の温泉旅とは根本的に異なり、いくら熱心な温泉ファンだとしても、温泉旅は他人の目にはレジャーに映る。
なお近くには、2017年に豊富町が運営する公共の総合交流施設「湯の杜 ぽっけ」ができている。
そこで車中泊をする人もあるようだが、24時間利用できるトイレがあるのかどうかまではわからない。ただ施設の内容からすると、将来的に「道の駅」に登録される可能性はありそうだ。
「湯の杜 ぽっけ」 オフィシャルサイト