この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

歴史と文化に彩られた、骨太のコンテンツを持つ近畿
古代ヤマト政権から始まる奈良、さらに都として1000年の時を刻んだ京都、そして「天下の台所」と呼ばれた食い倒れの街大阪…
文化と歴史だけを見ても、日本を語るに欠かせないエリアを抱えているのが近畿地方だ。
しかしそのいっぽうでは、原生林が生い茂る大台ヶ原や、渦潮の巻く鳴門海峡といった、豊かな自然にも恵まれている。
ここではその両方の恵みを、余すことなくいただきたい。
熊野三山(和歌山県)
ランドマーク・スポット#059
神倉神社
「熊野三山」という言葉ができる以前に、熊野大神が一番最初に降臨されたとされる聖地。
天ノ磐盾(あまのいわたて)と呼ばれる崖の上にあり、熊野古道中の古道とされる五百数十段の、まさに仰ぎ見るような自然石の石段を登りつめた所に御神体のゴトビキ岩がある。
【旅先の概要】
熊野古道の中核をなす熊野本宮大社を筆頭に、和歌山県南部の世界遺産構成要素を辿る。また那智勝浦では名物の生マグロを味わい、さらにくじらの町太地を経て、潮岬がある串本まで南下する。
【主な見どころ】
熊野本宮・湯の峰温泉・新宮・那智・南紀勝浦温泉・太地・串本


高野山・龍神温泉(和歌山県)
ランドマーク・スポット#060
奥の院
弘法大師御入定の地。弘法大師信仰の「メッカ」であり、高野山の聖域とも呼ばれている。一ノ橋から御廟に続く約2kmの参道沿いには、まっすぐ伸びた杉の大木に挟まれるように、20万基を超える諸大名の墓碑や祈念碑、慰霊碑が立ち並び、国の史跡にも選ばれている。
【旅先の概要】
大河ドラマ「真田丸」の舞台にもなった九度山から、世界遺産の高野山に登り、そこから高野龍神スカイラインで紀伊山地の尾根伝いに「日本三大美人の湯」で知られる龍神温泉へと下る。ベストシーズンはみごとな紅葉が見られる秋だ。
【主な見どころ】
九度山・金剛峯寺・奥の院・高野龍神スカイライン・龍神温泉
【車中泊旅行ガイド】
和歌山・湯浅・みなべ・白浜(和歌山県)
ランドマーク・スポット#061
千畳敷
南紀白浜温泉が誇る大自然の造形地。太平洋岸にありながら、地形の綾から「夕日のスポット」に挙げられている。
【旅先の概要】
和歌山城のある市内から、湯浅、みなべを経て、日本三古湯に数えられる名湯「崎の湯」と、黒潮がもたらす味わい深い海鮮、加えて白良浜や三段壁が織りなす美しい風景の「三拍子」が揃った、紀伊半島屈指のマリンリゾート「南紀白浜温泉」を目指す。
【主な見どころ】
和歌山タウン・湯浅・白崎海洋公園・みなべ・南紀白浜温泉
明日香村・吉野山・天川村
ランドマーク・スポット#062
吉野山
シロヤマザクラを中心に約200種3万本の桜が密集し、尾根から尾根へと山全体を埋め尽くす様子は、いにしえより「ひと目1000本」と称されてきた。
そのイメージが強いのだが、吉野山には伝説の行者「役小角」が建立したと伝わる金峯山寺や、吉野と熊野を結ぶ大峯山を縦走する、世界遺産に登録された大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)、さらには南北朝時代の吉野朝皇居跡など、歴史上の見どころも数多く残されている。
【旅先の概要】
古墳時代のロマンあふれる明日香村から、千本桜が花開く吉野山、そして世界文化遺産に登録された近畿の秘境・天川村まで、「知られざる奈良」の魅力が凝縮されたエリアを旅する。
さすがにここは、予習なしで楽しむのは難しい。
【主な見どころ】
吉野山・みたらい渓谷・洞川温泉・明日香村
【車中泊旅行ガイド】
平城京・奈良公園・斑鳩(奈良県)
ランドマーク・スポット#063
大仏・東大寺
1998年に「古都奈良の文化財」の一部として、世界遺産に登録された東大寺の本尊「盧舎那仏(るしゃなぶつ)座像」は、聖武天皇の発願で奈良時代の745年に制作が始まり、7年後の752年に完成した。
像高15メートルを誇る大仏と、それを安置している世界最大級の木造建築「大仏殿(国宝)」の建設費は、現在の価格に換算すると約4700億円ともいわれる。ちなみに東京スカイツリーの建設費は約400億円。「たったの」と思えてくるから怖い(大笑)。
【旅先の概要】
発掘調査と公園整備が進む平城京から、東大寺・春日神社を包含する奈良公園、さらには世界遺産「法隆寺」が残る斑鳩まで、国内一級品と呼ぶに相応しい史跡を訪ねてまわる。
【主な見どころ】
平城京跡・東大寺・春日大社・法隆寺
【車中泊旅行ガイド】
洛南(大阪府・京都府)
ランドマーク・スポット#064
寺田屋
幾度となくテレビや映画で取り上げられてきたため、「龍馬襲撃事件」の現場で有名なのだが、歴史学者にとっては「薩摩藩の内乱」の舞台であることのほうがが重要らしく、一般的にはそれを「寺田屋騒動」、あるいは「寺田屋事件」と呼んでいる。
【旅先の概要】
平安京遷都の導火線ともいえる長岡京から、平安時代・秀吉と家康の時代、そして幕末ゆかりの史跡がひしめく洛南は、あたかも1000年の都・京都の縮図のようだ。ここでは「おんな酒」とも呼ばれる日本酒も見逃せない。
【主な見どころ】
山崎・宇治・淀・伏見
京都市内(京都府)
ランドマーク・スポット#065
京都御所
京都にはほぼ同じところに「御所」と「御苑」があるが、その違いをご存知だろうか。
「御所」には他にも、内裏・皇居・禁中といった様々な呼び方があり、ことさらややこしく感じるのだが、要は「天皇が居住し、儀式や公務を執り行う場所」のこと。そして御苑は、かつてそれをサポートする公家が生んでいたエリアを、明治維新後に整備した国民公園を指している。
その「御所」が現在は通年無料開放されており、予約無しで見学できる。
【旅先の概要】
京都市内のほぼ全域を、セルフ・パーク&ライドでまわる。
多彩なコンテンツと広いエリアを誇る洛南は、あえて独立させているが、連動して旅をすることは可能だ。ただし観光密度の高い京都では、想像する以上に日数がかかることを覚悟しよう。
【主な見どころ】
洛中・東山・北山・貴船/鞍馬

嵐山嵯峨野・亀岡・福知山(京都府)
ランドマーク・スポット#066
天龍寺
数ある京都の世界遺産の中でも、指折りの紅葉スポットとして知られているのが、嵯峨野にある天龍寺だ。
1339年(暦応2年)に足利尊氏が、後醍醐天皇の菩提を弔うために創建した臨済宗天龍寺派の大本山で、別格に位置づけられた南禅寺に次ぐ京都五山第一位の格式を誇っている。
【旅先の概要】
【主な見どころ】
嵐山・嵯峨野・亀岡
丹後半島(京都府)
ランドマーク・スポット#067
天橋立ビューランド
「松島」「宮島」とともに、「日本三景」に挙げられている特別名勝。
砂嘴(さし)でできた砂浜には、約5000本もの松が茂っており、高台から望むその光景が、天に架かる橋のように見えることから、その名がついた。
展望所は2ヶ所あり、写真は「天橋立」が天に舞う龍のように見えることから「飛龍観」と呼ばれている「天橋立ビューランド」からの展望。
もうひとつの「傘松公園」からの眺めは、「天橋立」が昇り龍のように見えることから「昇龍観」と呼ばれている。
【旅先の概要】
日本三景のひとつ「天橋立」がある宮津、ブランド松葉ガニで有名な間人(たいざ)を有する丹後半島、そして舟屋で知られる伊根、軍港のあった舞鶴と、見どころの多い風光明媚なシーサイドエリア。大阪からのアプローチは、最初に久美浜から入り、時計回りに観光して舞鶴に向かうほうがスムーズだ。
【主な見どころ】
宮津・京丹後・伊根・舞鶴
【車中泊旅行ガイド】
湖東(滋賀県)
ランドマーク・スポット#068
彦根城
「関ヶ原の合戦後」に、徳川四天王の井伊直政が拝領した彦根の地に、天下普請で築かれた城。
世界遺産に登録された姫路城と同様、当時の城郭がほぼ完全に残る「現存12天守」のひとつで、天守は国宝指定されている。
彦根藩は多くの大老を輩出しており、中でも幕末の「桜田門外の変」で暗殺された井伊直弼は有名だ。
【旅先の概要】
サイクリング用語で「ビワイチ」と呼ばれる琵琶湖一周の旅路を、湖東と湖西に分けて周る。湖東は桃山時代に築かれた有名な城が多く、歴史好きにはお勧めのエリアだ。
【主な見どころ】
守山・近江八幡・安土・彦根・長浜
湖西(滋賀県)
ランドマーク・スポット#069
マキノ高原
この写真は、「日本で初めてカタカナの名前がついた町」というユニークな歴史を持つ、現在の高島市マキノ町のシンボルともいえる景観。
「マキノピックランド」から「マキノ高原」へとまっすぐ伸びる道路沿いに、約2.5キロにわたって続くこのメタセコイア並木は、1994年(平成6年)に読売新聞社の「新・日本街路樹百景」に選定された絶景ロードだ。
全国にその名が知られるようになったきっかけは、2002年に放送され、日本でも爆発的ヒットとなった韓流「冬のソナタ」。
そのオープニングシーンや各場面に登場したメタセコイアの並木道に酷似しているとの口コミから、多くの観光客が訪れるようになった。
【旅先の概要】
湖西は比叡山や鯖街道に面した朽木など、内陸部にも見どころが多く、自然も濃い。そのため湖東とは違う琵琶湖の側面も見られるが、そのぶんコース取りが重要になる。
【主な見どころ】
比叡山・大津・朽木・マキノ高原
神戸・有馬温泉(兵庫県)
ランドマーク・スポット#070
南京町
横浜中華街、長崎新地中華街とともに日本三大チャイナタウンの一つに数えられ、東西約200メートル、南北約110メートルの範囲に、100を数える店舗が軒を連ね、店頭ではテイクアウトの点心やスイーツ、あるいは雑貨、記念品などを販売している。
ちなみに「南京町」という言葉は、かつて中国人街を指す一般名称であったが、そのほとんどは戦後に改称したため、現在では事実上神戸のこの地区のみを指す固有名詞になっている。
【旅先の概要】
公共交通機関を使う旅とは違い、大阪寄りの灘・六甲の見どころと、さらに有馬温泉をリンクした「広域の神戸」を堪能する。
【主な見どころ】
灘・六甲・三宮・神戸・有馬温泉
淡路島・明石・播磨(兵庫県)
ランドマーク・スポット#071
アジュール舞子
アジュール舞子は明石海峡大橋の東、神戸市側にある「白砂青松の舞子の浜」を復元した公園で、「三井アウトレットパーク」「マリンピア神戸」などの商業施設と、人工の砂浜を持つ舞子海水浴場の愛称だ。
写真愛好家の間では、砂浜から明石海峡大橋が望めるフォトスポットとして知られている。
【旅先の概要】
明石海峡大橋を挟んで対峙する2つのエリアを旅する。
淡路島は車中泊環境がよく整っており、1泊2日で一周できるビギナーにも優しい旅先だ。また明石から龍野を経て姫路へと続く播磨一帯は、おいしい食材の宝庫である。
【主な見どころ】
淡路島・舞子・明石・姫路・龍野
但馬
ランドマーク・スポット#072
城崎温泉
開湯以来、外湯をめぐる温泉客を大切にしてきた城崎温泉は、巨大なホテルが立ち並び、激しい設備競争を繰り返しては宿泊客の独占を図ろうとする温泉地に比べると、はるかに開放的で居心地がいい。
それは車中泊の旅人に対しても同様で、温泉街の「界隈」にも「近郊」にも、多種多様な観光スポットと車中泊スポットが揃っており、季節や目的に応じて様々なスタイルで「温泉旅」が楽しめる。
【旅先の概要】
雲海に浮かぶ竹田城跡や、皿そばで有名な出石、さらに冬は松葉カニで賑わう但馬海岸など、近畿屈指の多彩な見どころを誇る。ベストシーズンはやはり松葉ガニ漁が始まる11月。年を超えると積雪と凍結への備えが必要だ。
【主な見どころ】
竹田城跡・出石・城崎温泉・香住・湯村温泉




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