この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

花の浮島・礼文島を堪能する。
クルマで旅する礼文島ガイド【目次】
花の浮島・礼文島
本州なら2000m級の山にしか生息しない高山植物が、海抜ゼロメートル地帯で花を咲かせる。
礼文島はその特有の環境から、いつしか「花の浮島」と呼ばれるようになった。
最盛期は5月下旬から7月上旬。
この時期には固有種を含めて、約300種類の高山植物が花開く。
上/エゾカンゾウは尾瀬や霧ヶ峰に咲くニッコウキスゲの仲間。 下左/エーデルワイスの仲間のレブンウスユキソウは礼文島の固有種。礼文林道に群生する。 下中左/ラン科のレブンアツモリソウ。その希少性と美しさから盗掘が相次ぎ、現在は保護地に咲く。 下中右/レブンヨツガマ。ヨツバシオガマの一種だが、大型化して花が10段以上にもなるため別名で呼ぶ。 下右/レブンキンバイソウ。シベリアなどの北方を故郷にする高山植物で、日本では礼文島のみに自生。
花の季節の留意点
アツモリソウとウスユキソウは、同時期に咲かない。
写真のレブンアツモリソウは、例年5月の下旬に最盛期を迎える。それに対し、レブンウスユキソウは6月中旬から下旬に満開となるため、同時期にキレイな両方の花を見るのは不可能に近い。
アツモリソウはハイキングコースでは見られない。

ちなみに、赤い花は礼文島固有種の白いレブンアツモリソウではなく、普通のアツモリソウだが、礼文島ではこちらのほうが珍しいという。
夜は真冬並みの冷え込みに注意。
礼文島は5月の最高気温が約12度、最低気温は約6度、6月は最高が約16度で、最低は約10 度。上旬と下旬では多少違うが、キャンプ場でも夕方以降は外で過ごすには厳しい気候だ。
2016年5月末の取材時には、明け方の気温が2度まで下がり、朝の久種湖は写真のようなケアラシとなった。また昼でも風は冷たく、ヤッケやダウンジャケットを持参するほうがいい。
さて。礼文島の魅力は花だけではない。
険しい断崖絶壁と樹木のない丘が続く西海岸には、他では味わえない「最果ての旅情」が漂っている。言い換えれば、この歩いて行くしかない環境が、今の景観と生態を守り続けてきた。
そのせいだろうか、礼文島に咲く花には、ハイビスカスのような派手さはない。だがどれもが凛々しく、素朴さの中に逞しさを隠し持っているようだ。
その他の礼文島の観光情報






礼文島の交通事情
観光よりも生活のためにクルマが必要
礼文島の観光スポットは、車道のない西海岸に集中している。
トレッキングの発着点となるスコトン岬や桃岩には、観光バスが行き来できる車道と駐車場が整備されており、大型のキャンピングカーでも行くことができるのだが、終着点から発着点に再び歩いて戻らなければならない。
つまり、カヌーで川下りをする時のように、2台のクルマがない限り、必ず徒歩で往復しなければならないわけだ。
ゆえに各コースを歩く際には、クルマはむしろ足手まといとなり、観光には公共交通機関の利用がお勧めという結論になる。


礼文島内には宗谷バスが路線運行しているが、ハイシーズンでもスコトン岬から香深のフェリーターミナル間を運行しているのは1日5便、しかも料金はひとり片道1000円を越える。
なお島にはセイコーマートが一軒だけあるが、香深のセイコーマートは「ホットシェフ」と呼ばれる店内でファストフードを作る設備があり、稚内から荷物がまだ届いていない早朝でも、おにぎりや焼きたてのパンなどが手に入る。
礼文滝や4時間コースを歩くには、食べ物の持参が好ましいことを考えると、やはり自由の効く移動手段が欲しい。
それを考えると、事前にここに書かれていることを掌握し、万全の準備を整えたとしても、登山の縦走経験などがなければ、クルマなしで耐えられるのはせいぜい2泊までだろう。筆者の最初の旅がそうだった。
礼文島の車中泊事情
最後は車中泊事情について記載しよう。
礼文島で車中泊ができる場所は島の南北に存在する。


いずれも買い物・入浴ともに便利とはいえないが、マイカーなら香深まで行けば問題はなかろう。
かつては久種湖の近くに「船泊湯」という銭湯があったが、既に廃業しており、代わりにキャンプ場にシャワー室が設置されている。
なお、島内にあるもうひとつの「緑が丘公園キャンプ場」には、車中泊ができるスペースは見当たらなかった。


礼文島 車中泊旅行ガイド
道北 車中泊旅行ガイド



